カワイRX-1のタッチウエイトマネジメント

カワイ RX-1 グランドピアノ
カワイRX-1をご使用中のお客様から
重たい鍵盤を軽くすることが出来ると知ったので作業して欲しい旨のメールを頂戴し
アクションをお預かりしました。

このところカワイのグランドピアノをお使いの方からの依頼が増えてます。

アクションをピックアップするより以前に
一度「調律」にお伺いして、状態を確認させて頂きました。
低音セクション、中音セクションではBW45g以上とかなり重く
次高音、最高音ではBW37.5g前後でさほど重くありません。
但し次高音と最高音のBW37.5gは
これが理にかなっているかはまだ分かりません。
全体にタッチが重い事に加え、後付けで消音ユニットを付けていて
レットオフが8mm前後とかなり広めになっている為に
ジャックの脱進量が異常に大きく、ジャックストップフェルトを押し付けて
おかしなタッチ感になっているので
重いタッチウエイトと相まって余計に弾きにくい印象です。

お預かりしたアクションを
「中村式タッチウエイトマネジメント
(Yuji Nakamura “Touchweight Management”)を利用して
標準的な重さに調整していきます。

 

 

フレンジの取付けが上下逆
作業に入る前に...
以前誰かがスティック修理の為にシャンクフレンジのセンターピン交換をしたようなのですが
1ヶ所フレンジを上下逆に取付けていてドロップスクリューが上下反転していました。

 

センターピン交換
上下正しい位置に直そうとセンターピンを抜いたところ
入っていたセンターピンは挿入側の細い部分を通過させずに
フレンジ内にとどめてセットされていました。
写真で確認出来るセンターピンはセットされていたピンです。
センターピンの右側に挿入部分が確認出来ます。
当然トルクは無くスカスカでしたので
フレンジの上下を正しい向きにしてセンターピンを交換し
適正トルクに調整しておきました。

 

サンプル音での平衡等式
現状のデータ採集を済ませ平衡等式を作成します。
データ採集は、「フリクション関連項目」「スタンウッドシステム関連」、
慣性モーメント値も変更したいので「慣性モーメント関連」の全てを行いました。

BWは低音では45g以上もあって弾けない重さ、
中音のBWは37.5gと41.5gで標準と重めが混在、
次高音は37.5gで標準です。

C4(40key)を3要素関連票で確認してみると
HSWが指標8で、SRが6.5であるならば
BWは47gになるとあります。
ところが実際のC4(40key)のBWは41.5gなので
鍵盤鉛を多く入れてBW41.5gにしているという事になります。
結果FWはシーリング値を超える33.8gになっています。

Fは鍵盤によってかなり大きいものもあり、全域で大きめです。

FWは低音はシーリング値マイナスですが、中音と高音はシーリング値を超えています。

KRは最低音が0.50、その他は0.51。

HSWは低音が指標6から指標7.5で軽め、
中音が指標8で、高音が指標10と重め。

SRは6.3から6.6で高めの傾向です。

6mm治具で測定したARは低音が5.5、中音5.3、高音、5.7でした。

 

オリジナルのHSWスマートチャート
オリジナルのHSWチャートを作成します。
K社に多い傾向で低音が指標6から指標7.5で軽く、
中音は指標8から指標9に多くが分布して
次高音は指標9から指標11の間で重め、
最高音は指標8から指標9付近でした。
この分布から現実的に調整可能なのは
低音を指標7から少しずつ重くしていき
中音で指標8、次高音にかけて指標9に上げていき
最高音も指標9でそのまま滑らかに続いていく感じに
仕上げるのが無難と判断しました。

 

平衡等式を利用して事前シミュレーション
オリジナルC4(40key)の事前シミュレーションです。

一段目はオリジナル状態の平衡等式です。
【2段目 HSW増減量】
先のオリジナルHSWチャートから中音は指標8に調整する事にしましたので
このキーのHSWは何もせずこのまま10.0g(#8)。

【3段目 SR削減】
次にバランスパンチングの半カットを利用してSRが0.4下がることを想定し
HSW10.0  × SR0.4 でBWは41.5gから4g下がるのでBW37.5gに。

【4段目 SR削減】
さらにもう一段階SRを下げるためにウイペンヒールへのシムの挿入を利用して
SRが0.4程度下がると見込んで、BWを37.5gから33.5gまで下げます。
6.5と高めだったSRはこの時点で5.7まで下がりました。

【5段目 BW基準の鍵盤鉛調整】
軽くなり過ぎたBWを標準的な重さに調整するために
最後にBW基準の鍵盤鉛調整を行います。
BWを38.5gにするとFWは28.5gになり
FWはシーリング値マイナス1.5gで
BWは38.5gと標準的な重さになり
実用的に弾けるタッチのピアノに出来そうです。
SRが5.7である事で操作に間違いがない事を確認します。

この作業を進めていくときにBWに馴染みが無いと
どうしてもDW、UWを気にしてしまう方も多いと思います。
上記シミュレーションでは最終的なDWは57gでUWは20gとなっているので
これまでDW、UWでのタッチウエイト調整に長く慣れ親しんだ方ほど
「軽くなってないじゃないか」と思うかもしれません。
この後の作業で、18.5gと大き過ぎるFを13.0gに下げると
DW51.5g、UW25.5gになります。
Fを11.5gまで下げた場合は、DW50g、UW27gになります。
この作業では「BWそれ自身」を「静的重さの基準(目安)」として扱いますので
BWが「目標とする基準」に到達するよう調整を進めていきます。
今回の作業では目標とするBWを「標準の中のさらに中心値」であるBW38g付近にして
且つFWもシーリング値マイナスにすることが
静的重さの調整のゴールになるので
DW、UWはとりあえず視界と頭の中からいったん横に置いておいて頂き
BWが目標値になるようシミュレーションすると上手くいきます。
左辺で特に重要なのは「BW」と「FW」です。
DW、UWはBW設定後にF処理で解決します。

※BWとFの関係は
書籍「タッチウエイトマネジメントの方法」の21ページから22ページに掛けて説明がされています。

※各鍵盤とFの基準は書籍「タッチウエイトマネジメントの方法」188ページ、
「スタンウッド氏によるフリクションウエイト表」に一覧が掲載されています。

※BWの重さの基準は
書籍「タッチウエイトマネジメントの方法」中村祐司[著]の80ページ、
「5 バランスウエイトと慣性モーメントの目標設定」に説明が記載されています。

またタッチを軽くする方向の作業なので
静的重さと同時に、この後作業していく
「慣性モーメント値を下げる」ことが
弾きやすいタッチを実現することに大きく影響してくるのと
慣性モーメントを数値化して平衡等式と連動して調整出来るのが
この作業の醍醐味です。

 

 

鍵盤テンプレート
スタンウッドの平衡等式に慣性モーメントも連動させてシミュレーションしたいので
鍵盤のテンプレートを作成します。
(鍵盤テンプレートの作成方法は中村さんの書籍「タッチウエイトマネジメントの方法」の
51ページから説明されています)

 

kawai_rx1_19
鍵盤テンプレートのデータを表計算ファイルに入力します。
一段目(A)はオリジナルの状態で、鍵盤固有の慣性モーメント値は27,907gcm2。
二段目(B)は想定最小値で、22,605gcm2。
三段目(C)は最も外側に入れてある鍵盤鉛を抜いて鍵盤鉛調整を行ない24,332gcm2。
四段目(D)は既存の鍵盤鉛の配置のまま、外側の鍵盤鉛をドリルで削り26,031gcm2。
五段目(E)は鍵盤鉛の無い鍵盤のみで17627gcm2。

(C)と(D)のどちらかを選択する事になりますが
作業効率の良さと効果の大きさから(C)の効率的作業を選択します。
外側の鍵盤鉛を抜いて、内側に12mmと10mmの鉛を追加しました。
いくつかの組み合わせを試行した中で
この組み合わせが最もC0Gを理想値に近く出来て
且つFWを目標値に出来て、慣性モーメント値も下げられる位置決めでした。
C0Gを気にしないのであれば、
もう少し慣性モーメント値を小さくすることも可能です。
この辺りは個々のアクションの状態や顧客の要望如何で
何を優先するか臨機応変に対応すれば良いでしょう。
やたらとタッチの重いピアノや
顧客がとりわけ軽快なタッチを望んでいるようなケースでは
慣性モーメントが出来る限り小さくなる位置決めを選ぶと良いです。
鍵盤固有の慣性モーメント値は
オリジナルの27,907gcm2から24,332gcm2まで下げる事が出来ました。

 

BWと慣性モーメント値比較表
ギアレシオの項目を入力すると
最終的にBWは41.5gから38.5gとなり7パーセント軽くなり、
アクション全体の慣性モーメント値は
144,946gcm2から135,680gcm2と6.4パーセント軽減出来る結果になりました。

 

【実際の作業】

 

HSW調整
HSWの調整を行いました。
黒がオリジナル、赤が調整後です。
低音から高音までオリジナルの重さのバラツキ幅が大きかったので
上手く繋げるのが難しい状態でした。
最低音は指標6と軽過ぎるので指標7まで持ち上げて
そこから中音にかけて指標8に繋げ
次高音から最高音までを指標9で揃えました。
オリジナル状態では隣のハンマーと0.7g違うところもあったので
隣り合うハンマーの重さが揃いタッチと音色が揃ってくると思います。

 

パンチング半カットの為の接着剤塗布
バランスパンチングクロスの半カットを行う為に
鍵盤バランスホールの奥側に接着剤を塗布します。
私は「コニシ 木工用ボンド プレミアム 速乾」を使ってます。
先端が極細になっているので狙った部分に塗布しやすいです。
このボンド、中身は通常の「コニシ ボンド 木工用 速乾」と同じなので
プレミアムの先端を外して中身は「コニシ ボンド 木工用 速乾」を補充することで
プレミアムの容器を再利用出来ます。

 

バックチェック重り
鍵盤底面に接着剤を塗布したら
後ろ加重で鍵盤をセットし
白鍵ならし用のバックチェックに引っ掛ける重りを付けて
接着剤が乾くまで放置します。
速乾なので割とすぐ作業に取り掛かれます。

 

後ろ加重で接着されたパンチングクロス
後ろ加重で接着されたバランスパンチングクロスの状態です。
右側が鍵盤後ろ側、左が手前側(弾き手側)です。
バランスパンチングクロスが後ろ加重で僅かに斜めになっているのが分かります。

 

パンチングの半カット
鍵盤底面に接着されたパンチングを中央でカットします。
今回は軽くする方向で作業していますので
後ろ側を残し手前側を取り去ります。

 

ヒールへのシム挿入
ウイペンヒールにシムを挿入します。
軽くする方向の作業なのでジャック側にいれます。
先に細工カッターでヒールクロスを軽くさらって
不要な接着部分を無くしておくと入れやすく任意の位置にセット出来ます。
近年のさほどアールのついていないヒールであれば
それほど厚みのあるシムを入れなくても十分に効果があります。
アールのきついヒールや厚手のヒールクロスが使われているピアノの場合は
少しシムを厚めのものにしないと上手く効果が出ない場合もあるので
その際はシムの厚さを変更して効果を確認しながら進めていくと上手くいくと思います。

カワイRX-1オリジナルの
ウイペンと鍵盤間のギアレシオは1.9
ハンマーと鍵盤間のギアレシオは8.2
でしたが
作業後は
ウイペンと鍵盤間のギアレシオは1.8
ハンマーと鍵盤間のギアレシオは7.7
に低くなりました。

因に同クラスのヤマハ C1Xではオリジナルの
ウイペンと鍵盤間のギアレシオは1.8
ハンマーと鍵盤間のギアレシオは7.6
でしたが
作業後は
ウイペンと鍵盤間のギアレシオは1.7
ハンマーと鍵盤間のギアレシオは7.2
でした。

ギアレシオの違いもヤマハとカワイのタッチウエイトの違いに
少なからず影響していると思われます。

 

オリジナルの鍵盤鉛の配置
オリジナルの鍵盤鉛の配置です。
上から2本ずつ低音、中音、次高音、高音です。
鍵盤鉛が外側に寄せて入れてあるのが分かります。
下から3本目(次高音の黒鍵)と下から2本目(高音の白鍵)では
外側から3個目の鍵盤鉛が2個目の鉛にかなり寄せて入れてあるのが分かります。

 

外側の鍵盤鉛を抜く
HSW調整、SR調整、フリクション処理等全て済ませたら
鍵盤の外側に入れられた鍵盤鉛を抜いていきます。
BW基準の鍵盤鉛調整を行う前に事前に済ませておきます。
削るのではなく押し出して抜きます。
ボール盤と治具を使うと便利です。

 

BW基準の鍵盤鉛の配置
BW基準の鍵盤鉛調整を行います。
一番外側に入れられた鉛を抜いて
新たに内側に鍵盤鉛が入りました。
気になる人は抜いた穴を埋め木しても良いですが
その場合、鍵盤材の質量分、
慣性モーメントが増えてしまうことを考慮する必要があります。
少しでも軽くしたい場合は木の質量分も惜しいので
そのままのほうがタッチは軽くなります。

 

低音の鍵盤鉛
低音のBW基準の鍵盤鉛調整後の状態。
外側に入っていた14mmの鍵盤鉛を抜いて
内側に14mmの鉛を2個入れています。

低音や黒鍵など音域によってはどうしても鍵盤鉛の数が多くなります。
鉛の量(鉛の個数)が増えているので
タッチが重くなるのではないかと思う人がいるかもしれません。
確かに鍵盤鉛の数はオリジナルよりも多くなっていますが
同じFWにする場合、オリジナルの鉛の配置よりも
内側に多く配置したこの状態のほうが
慣性モーメント値は小さくなります。
この事については中村さんの書籍「タッチウエイトマネジメントの方法」の
71ページの図4-6「鍵盤鉛のフロントウエイトと慣性モーメントへの影響の比較」を
みて頂けると理解頂けます。
図4-6の上段と中段の鍵盤は鍵盤鉛は少ないですが
支点より外側に(支点から遠くに)鍵盤鉛が配置されているために
慣性モーメント値がかなり大きくなってしまい、
下段の鍵盤は鍵盤鉛の量は最も多いにもかかわらず
慣性モーメント値をとても小さくすることが出来ています。
いずれの鍵盤もFWは同じです。

 

FWの再確認
今回の作業は時間に余裕があったので
BW基準の鍵盤鉛調整後に再度FWがシーリング値を超えてないか確認してみました。
BW基準で作業を進めていくと、しわ寄せがFWに誤差となって出ます。
測定結果は全てシーリング値を下回っていましたので一安心です。

 

 

作業後はBW38.5g、慣性モーメント値6.4パーセント減で
弾きやすいグランドピアノになりました。
いずれ消音ユニットを取り外せば
整調を基準寸法に戻せるので
もっと良いタッチのピアノになります。

 

グランドピアノの重たいタッチ、標準的なタッチに調整します。
作業のご依頼、お問い合わせは
Eメール info@piano-tokyo.jp までお気軽にどうぞ。

 

渡辺ピアノ調律事務所
〒154-0016 東京都世田谷区弦巻1-20-14
E-mail  info@piano-tokyo.jp
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weblog  http://www.piano-tokyo.jp/blog/

グランフィールの取付け(アポロUG122DX)

APOLLO 東洋ピアノ
アポロUG122DXにグランフィールを取付け。

いつも定期調律でお伺いしているお客様のピアノで
東洋ピアノでは、時々見かけますが
アップウエイトが不足ぎみで、鍵盤の戻りの反応が悪く
結果バランスウエイトはさほど大きくないのに
弾いていて重く感じるという状態がありますが、このピアノでも見られました。

お客様から「鍵盤が重く感じて弾きにくいので調整出来るなら少し軽くして欲しい」
との要望があり、グランフィール取付け前に
一度調整にお伺いして、タッチの調整を済ませてあります。
バランスウエイトは維持しつつ
アップウエイトを3gほど大きくしました。
果たして弾きやすいと感じて頂けるか心配でしたが
この作業のあと、お客様からメールを頂き
「指に吸い付くようになり弾きやすいです」との事で一安心。

 

タッチの調整を事前に済ませ
グランフィールパーツを取付けました。
グランフィールの取付け
タッチが重くならないようなセッティングを心がけ、
且つしっかりグランドピアノと同様のタッチ感が得られるように
取付けと調整を行いました。

 

グランフィールの納品と調整
そして本日お預かりしてグランフィールパーツを取付けたアクションの
納品と調整を行いました。
事前のタッチ調整と
グランフィールパーツの取付け時の工夫が功を奏したようで
頭の中で描いていたよりも、大分良い感じのタッチに仕上りました。
後はこのピアノをメインで弾いている子供さんにしばらく弾いてもらって
再度調整の必要があれば、好みに合うようセッティングを詰めていく予定です。

 

 

「グランフィール」
http://www.piano-tokyo.jp/granfeel.html

 

 

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グランフィールの取付け(ヤマハUX500)

グランフィール
お客様のヤマハUX500に後付けグランフィールを取付け。

以前からグランフィールに興味がお有りで
今回、念願の取付け作業となりました。

 

グランフィールは、今お使いのアップライトピアノに
グランフィールパーツを追加する事で
アップライトピアノでありながら
グランドピアノさながらのトリルや連打を弾く事が可能になり
取付けたパーツの副産物として
タッチだけでなく響きまでもグランドピアノに近づくという技術です。

 

グランフィールパーツ
グランフィールパーツも地味に改良されていっております。
今回入荷分ではジャック関連の部品が新しくなっていました。
見ると「なるほど!」といったバージョンアップです。

 

取付け後、調整作業中に少し離れたところで音を聞いていたお客様が
「本当にグランドピアノみたいな奥行きのある音ですね」と喜んで居られたのが印象的。
体感で分かるくらいには高次倍音が増すので、響きがゴージャスになります。

 

今あるアップライトピアノを気に入っているし
グランドピアノに買い替えるほどではないけど
もう少しグランドピアノのように表現豊かに演奏出来たら...

そんな時は選択肢として、グランフィールを検討なさってみるのも一つの方法です。

 

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鍵盤が下がったまま戻らない

鍵盤
いつも調律にお伺いさせて頂いているお客様から連絡があり
65(C#)と66(D)の鍵盤が下がったまま戻らないので見て欲しいとの事。

ピアノはカワイのGM-10 ピアノマスク付きです。
特別湿度の高いお宅でもないので
フレンジや鍵盤のスティックは考え難いです。
隣り合う鍵盤で動きが悪くなっているという事なので
鍵盤と鍵盤の間、もしくはアクション部品間に
何か異物が入ってしまった可能性が考えられます。

お伺いして鍵盤を見てみると

65(C#)が左に寄ってしまい、66(D)との間が広くあいていました。
何か入ってそうです。

 

鍵盤の異物
ありました。
小さく丸いものが絶妙に鍵盤の間に嵌ってしまい
鍵盤がスムーズに動けなくなっています。

 

異物を除去
アクションと鍵盤を外して
異物を無事取り除きました。
こんな小さなものでも、入り込んだ場所が悪いと
鍵盤の動作を妨げてしまいます。

鍵盤とアクションを元に戻して動作をチェック。
無事に鍵盤が元通り動くようになりました。

 

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カワイGX-2のタッチウエイトマネジメント

カワイGX-2
カワイのグランドピアノGX-2のタッチウエイトマネジメントを行いました。

カワイのピアノを使っている方に多い
「音色は気に入ってるんだけど、なにしろ鍵盤が重くて...」
というものです。

 

このピアノを弾くのは高校生で
タッチウエイトの不満と要望は

・短い曲なら何とか弾ききる事が出来るが、長い曲になると途中で手が疲れてしまう
・今より少し軽くして欲しい
・スタインウェイや軽かった時代のヤマハほどは軽くしたくない

といった内容です。

 

話しを伺うと、このグランドピアノの前に使っていたのもカワイのアップライトで
カワイの重たいタッチには慣れているものの
それにしても新調したグランドは鍵盤が少し重いので
もう少しだけ楽に弾けるように軽くなると良いとの事。

依頼者の希望するタッチウエイトが割と明確なので
作業する側としても青写真が描きやすく助かります。

 

そして昨日、仕上ったアクションを納品し調整を済ませました。
お客様からは
「タッチ、とても良い、弾きやすい」との感想を頂戴しました。
弾き手の思い描く理想のタッチウエイトに調整されると
何時間でもピアノを弾いていられるようになります。

 

ピアノは納品されてまもないGX-2で
整調は概ね問題ないものの
中音下あたりのダンパー掛かりが遅く
ダンパーが上がりきっていないのと
総上げもバラツキがあったので、修正しました。

少し弾かせて頂いた感じで
すぐに「重い!」と感じるくらいにタッチの重いピアノです。
アクションをお預かりして重さの原因を分析し調整します。

 

オリジナルの平衡等式
サンプルキーでのオリジナルの平衡等式。

BWは49g前後と重め。

HSWは低音は指標9.5前後で思ったほど重くないですが
次高音から最高音は指標10から11と重め。

平衡等式から得られるSRは6.3から5.9。
2g治具で低音が6.5と高め、中音と高音は6.0。

Fは鍵盤によって若干高め。

FWは予想に反し小さめのキーが多いです。

6mm治具によるARは5.7。

 

今回は今より少し軽く作業ですので
HSWを一定量下げて
SRは一段階だけ低くして
BW基準の鍵盤鉛調整をすれば
顧客の希望するタッチになりそうです。
目標とするBWは43gにして
慣性モーメントも少し小さくすることで
長時間弾いても疲れないタッチを目指します。

 

オリジナルのHSW
オリジナルのHSWスマートチャート。

低音は指標9から10、中音割振り付近で指標11のものがあり
次高音から最高音も指標10から12と重めでした。

全域を指標9.5くらいまで下げて
BWと慣性モーメントを小さくする方向で調整します。

 

鍵盤テンプレート
慣性モーメントも変更したいので
鍵盤テンプレートを作成。

 

 

FWと慣性モーメント
オリジナルのFWが小さかったので
慣性モーメントを操作しない作業ならば
Dの「別の効率的作業」で、外側の鉛を僅かに削れば
それで目標FWとなりますが
慣性モーメントも小さくしたいので
Cの「効率的作業」、外側の鍵盤鉛は抜いて
内側に移動する作業を選択します。

今回はC0Gも意識して鍵盤が効率的な運動をするよう調整します。
このキーではC0Gが0.430となっています。

 

オリジナルと作業後の比較
BWが9パーセント小さくなり
慣性モーメントは5.8パーセント小さくなる
という結果が得られました。

 

 

HSW調整後
調整後のHSW。

指標9.5くらいで綺麗に揃いました。(赤丸)
音色のバラツキも解消されそうです。

 

カワイのウイペン、スティック修理
弾いた感じ妙に重く弾きにくいのと
Fが大きめの鍵盤がある事から大体想像はつきますが
カワイのプラスチックアクションがスティックを起こしていました。
今年は特に8月が長雨でしたので
カワイ使用者からのスティック修理依頼が急増中...

新品ですが、少しでも湿度が高いと
カワイのアクションはスティックを起こすので注意が必要です。

お客様はエアコンこそ24時間運転しているものの
湿度計で確認している訳ではなかった為
実際に湿度が下がっているかは確認しておらず
「多分乾いてるんでしょう?」という程度の運用でした。
実際の湿度をチェックしてみると室温26度で湿度60パーセントでした。
この室温だともう少し湿度が低いほうがいいですね。
木製アクションのピアノならば
この程度の湿気であれば普通に動いてしまうところ
カワイのアクションだとスティックしてしまうようです。

ダイキンのエアコンをご使用で
このエアコンならば本来はもっと除湿能力が高い筈ですが
購入から5年は経過していて
その間、クリーニングを行っていないとの事で
除湿性能がかなり落ちているものと思われます。
3年から5年に一度、
メーカーに「分解洗浄」を依頼すると
驚く程エアコンの性能が復活しますので
ピアノの定期調律と同様、エアコンの「分解洗浄」も定期的に行う事をオススメします。
そのうえで湿度計で湿度をチェックして
任意の湿度まで下げられない場合は
関東地方であればコンプレッサー式の除湿器を
エアコンと併用して頂ければ、適湿まで下げられるでしょう。

ウイペンフレンジのスティックが特にひどく
10g超えでトルクゲージを振り切ってしまうフレンジが多数。
サポートフレンジも同様で、ジャックは6gから8gとやはり高め。
シャンクフレンジは2gから3gと問題なく
これはシャンクだけは木製だからで
雨が多く、湿度の高い日本では
プラスチックアクションは少々扱いにくいです。
カワイの場合はシャンクだけ確認して動いていても
下部のウイペンアッセンブリーは総プラスチックなので
こちらがスティックしている場合があるので要注意です。

全てのフレンジのトルクをチェックし
適正トルクに修正しておきました。

 

キャプスタン
キャプスタンの状態ですが
右がカワイのオリジナル状態、
左が研磨後です。

納品したての新品でも
傷がありデコボコしていましたので
1500番から2000番のペーパーを掛けてから
バフ掛けし鏡面仕上げにしました。

ドロップスクリューも似たような状態でしたので
こちらも磨き直しています。

 

 

鍵盤の鉛抜き
BWを小さくして慣性モーメントも小さくする作業なので
事前に手前側(外側)の 鉛を抜いてしまいます。

カワイGX-2のオリジナルの鉛の配置は
かなり外側に寄せて入れていました。
DW基準で入れているからでしょうが
これでは慣性モーメントが大きくなってしまいます。

鉛のかしめは甘く、簡単に抜き出す事が出来ました。

 

BW基準の鍵盤鉛調整
BW基準の鍵盤鉛調整で
新たに鉛を入れる位置を決めます。
今回は少し重めとしますのでBWは43gとし
事前のシミュレーションで得られた
慣性モーメントを小さく出来、
且つ目標とするC0Gを満たす位置になるよう
鉛の位置を決めていきます。

 

鍵盤の鉛入れ
新たな鍵盤鉛は内側に寄せて入れました。
音域により、元の鉛よりサイズを小さく出来たり
鍵盤によっては新たな鉛を必要としないキーもあります。
タッチウエイトマネジメントでは
鉛の位置を内側に移動出来たり
鉛のサイズを小さく出来たり、鉛の数を減らせたり出来ますので
タッチウエイト変更の自由度が高く
またその組み合わせも多様です。

 

  • 鍵盤が重いので軽くしたい
  • 鍵盤が軽過ぎるので重くしたい

等の
タッチウエイトの調整、承ります。

まずはメールでお問い合わせくださいませ。

 

タッチウエイトマネジメント(Nakamura Touchweight Management)

 

渡辺ピアノ調律事務所
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