ヤマハ G3(昭和41年)のタッチウエイトマネジメント
![ヤマハ No.G3](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41026-1.jpeg)
Eメールで「タッチウエイトマネジメント」作業のご依頼を頂きました。
「他所で弾くピアノと比べて自宅のピアノの鍵盤は異常に重い」との事です。
お伺いした日に調律を済ませ、鍵盤を軽くする作業を行うために
アクションをお預かりしました。
![オリジナルの平衡等式](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41010-1000x280.jpg)
BWがとても重くて、ほとんどのキーで45gを超えています。
Fも異常に大きく大半が15gオーバー。これはスティックによるものですね。
HSWは予想に反して非常に軽く、指標4.5程度。
SRは高め。
鍵盤鉛が少なめなのでFWはシーリング値を下回っています。
![オリジナルのHSW](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s410000-1000x750.jpeg)
オリジナルのHSWスマートチャート。
指標4から指標5程度と非常に軽いです。
![平衡等式を利用してのシミュレーション](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41022-1000x139.jpg)
オリジナルの4Key(C1)での平衡等式を利用してのシミュレーション。
HSWはオリジナルの指標4.5を維持。
パンチングの半カットでSRを下げ、BWは49.5gから45.5gに。
さらにヒールへのシム挿入でBWが45.5gから41.5gまで下がります。
最後にBW基準の鍵盤鉛調整を行いBWは38gとなり
FWは35.1gでシーリング値マイナス5.5となるので
弾きやすいタッチのピアノに仕上げる事が出来そうです。
DWとUWを気にする向きの方々の為に付け加えると
シミュレーションでは最終的なDWが72.5g、
UW3.5gとなっていますが
実際の作業ではFを12gに調整し
DW50g、UW26gという結果に仕上がりました。
事前シミュレーションで必要としている項目は
DW、UWではなく、BWを標準値にする事で
さらに言えばBWを標準値に設定するとともに
慣性モーメントを下げることを作業の目標としています。
![FWと慣性モーメント計算](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41032-1000x351.jpg)
タッチを重くする外側の鉛を抜いて(距離197mm)、
新たに内側に直径14mmの鉛を2つ追加する効率的作業を選択。
![BWと慣性モーメント](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41031-1000x327.jpg)
最終的な結果は、BWが23パーセント減、
慣性モーメントは4.8パーセント削減することが可能となりました。
![HSW調整後](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41011-1000x750.jpeg)
HSW調整後のスマートチャート。
赤が調整後、黒がオリジナルです。
指標4.5で滑らかに仕上がりました。
![奇妙なファイリング](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41028-1.jpeg)
前回の調律の際に
調律師さんにファイリングをしてもらったそうなのですが
画像の通りハンマーを横から見ると
ウッドのセンターに対して
ハンマーフェルトの頂点が左にズレて
ファイリングされています...
![正面から見たハンマー](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41015-1.jpeg)
さらにハンマーを正面から見てみると
こちらも傾いてファイリングされてしまってます...
弦溝を見ても分かる通り
弦合わせでハンマーが左によっているので
右の弦はきちんと鳴っていませんでした。
![ファイリングを修正](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41021-1.jpeg)
ファイリングをやり直して、ハンマーの形を整えました。
弦合わせも修正しハンマーが3本の弦の
真ん中で叩くようにしてやると鳴りもよくなります。
![ローラーの黒鉛](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41017-1.jpeg)
タッチが重いということで
以前に作業なさった調律師さんが
ローラースキンにテフロンを塗布しているのですが
黒鉛を取り除かないままテフロンを施工しているため
定着せずに効果が得られていませんでした。
![ローラーの黒鉛を除去](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41038-1.jpeg)
ローラーをファイリングして黒鉛を除去しました。
![PTFEパウダー](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41008-1.jpeg)
ローラースキンの黒鉛を取り除いてから
PTFEパウダーを施工することで効果が最大限に得られます。
![センターピンに緑青](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41020-1.jpeg)
センターピンには緑青が見られます。
![センターピンのトルク](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41033-1.jpeg)
ウイペンもガチガチにスティックしていて
トルクゲージの目盛りを振り切ります。
![シャンクフレンジのセンターピン交換](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41002-1.jpeg)
シャンクフレンジのスティックを直すために
センターピンを交換します。
![ハンマーにスカッチ入れ](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41025-1.jpeg)
テールには溝が入っていませんでしたので
スカッチを入れます。
バックストップがカチッと決まります。
![ウイぺんのセンターピン交換](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41024-1.jpeg)
ウイペンアッセンブリーの各フレンジも
スティックしていますのでセンターピンを交換し
トルクを正常な値に調整します。
![ジャックのズレ](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41007-1.jpeg)
ジャックの位置が右に寄っていて
抜けが悪くなりますので
![ジャック位置修正中](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41037-1.jpeg)
専用の工具を使って位置を修正
![ジャックに位置が修正された](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41035-1.jpeg)
ジャックが真ん中に来ました。
抜けが良くなりタッチ感も向上することが期待されます。
![ヒールへのシム挿入](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41003-1.jpeg)
SRが下がる位置にシムを挿入します。
![磨く前のキャプスタン](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41039-1.jpeg)
キャプスタンは長いこと磨かれていないようでした。
![キャプスタンを磨いた後](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41001-1.jpeg)
キャプスタンの頭を磨き動きをスムーズに。
![バランスホールの掃除](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41019-1.jpeg)
バランスホールの掃除なんかも
長いことされていませんでしたのでブラシを使い掃除しておきます。
ゴミが大量に出てきます...
![バランスホールのクリーニング](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41018-1.jpeg)
バランスホールを細綿棒にベンジンを付けて掃除します。
キーピン磨きとセットでこの作業を行うと
鍵盤の動きがとても良くなります。
![オリジナルの鍵盤鉛](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41013-1.jpeg)
オリジナルの鍵盤鉛位置の様子。
上から2本ずつ、最低音、低音、中音、次高音、最高音。
最低音では12mmの鉛が3個。低音で2個。
中音では2個から1個程度。
次高音では8mmの鉛が1個もしくは無しで
途中から後方に入れてあります。
最高音は12mmの鉛が後ろ側に1個。
全体に鉛の数が少なくBWを大きめに設定しているようです。
![最低音の鍵盤鉛](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41023-1.jpeg)
オリジナルの最低音の鍵盤鉛の配置。
外側に寄せて鉛が入れてあるために
タッチが重くなっています。
![鍵盤鉛を抜く](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41030-1.jpeg)
タッチを重くする外側の鍵盤鉛を抜きます。
![外側の鉛を抜き出した](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41016-1.jpeg)
外側の鉛を抜きました。
![鍵盤の穴あけ](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41036-1.jpeg)
新たに追加する鉛は内側に寄せます。
![鉛のかしめ](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41005-1.jpeg)
内側に鉛を入れる事でタッチを軽くします。
![黒鍵の塗装剥がれ](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41012-1.jpeg)
たくさん弾かれたピアノは黒鍵サイドの塗装が削られてしまいます。
![黒鍵サイドの塗装](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41034-1.jpeg)
黒鍵サイドの塗装の剥がれを塗り直しておきます。
![黒鍵の脇を塗装](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41027-1.jpeg)
写真を撮り忘れましたが
白鍵のサイドは手垢で黒く汚れますので
こちらも綺麗に取り除いておきました。
![中音の鍵盤鉛](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41014-1.jpeg)
これは中音の新たな鍵盤鉛の配置です。
タッチを重くする外側の鍵盤鉛を抜いて
内側に寄せて鍵盤鉛を入れ直しました。
慣性モーメントが小さくなり
鍵盤を素早く動かすような演奏時にも
タッチは軽くなりとても弾きやすくなります。
![事前整調](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41029-1.jpeg)
納品してからも行いますが
事前に整調しておくことで納品時の整調がスムーズに行えます。
![納品](https://www.piano-tokyo.jp/blog/wp-content/uploads/2020/12/yamaha_g3_s41004-1.jpeg)
膨大な調整を済ませて
ようやくアクションを納品し整調を行い完成です。
BWは標準の38gになり慣性モーメントが下がり
とても軽快なタッチのピアノになりました。
納品時はご依頼頂いたご主人様は不在で奥様に立ち会って頂き、
後日ピアノを弾いた依頼者さんからメールを頂きました。
「これまで弾きにくかったパッセージも楽に弾けるようになり
ピアノはとても弾きやすくなりました。また音も良くなりました」と
ご連絡があり、作業は問題なく仕上がったようで一安心。
グランドピアノの重たいタッチ、標準的なタッチに調整します。
作業のご依頼、お問い合わせは
Eメール info@piano-tokyo.jp までお気軽にどうぞ。
渡辺ピアノ調律事務所
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