ディアパソン183-Gのタッチウエイトマネジメント(データ採集、試行編)

DIAPASON 183-G
ディアパソンのグランドピアノ、 183-Gのお客様から
鍵盤が重いので軽くして欲しいとのご依頼があり
タッチウエイトマネジメントを行いました。

 

現在の状態のチェック
現在の状態をチェックしデータ収集します。

 

タッチの現状は

C1 : DW62g , UW14g , BW38g , F24g
C#1 : DW61g , UW21g , BW41g , F20g
C2 : DW61g , UW17g , BW39g , F22g
C#2 : DW63g , UW16g , BW39.5g , F23.5g
C4 : DW55g , UW21g , BW38g , F17g
C#4 : DW57g , UW22g , BW39.5g , F17.5g
C6 : DW52g , UW21g , BW36.5g , F15.5g
C#6 : DW50g , UW21g , BW35.5g , F14.5g
A7 : DW45g , UW17g , BW31g , F14g

という結果です。

 

計算SRは6.2、
2g重りによるSRは、低音6、中音6、高音6.5でした。

6mm治具によるARは6です。

アクションスプレッドは113.5mm。

 

BWはさほど重くないようです。
Fが大きくその為DWが大きくなりUWが小さくなってしまい
タッチが重くなっています。

また以前このピアノを定期調律しておられた調律師さんが
顧客からタッチを軽くして欲しいと言われ
鍵盤底面のフロントブッシングクロス周辺に
6.6gと1gの板鉛が貼ってあります。
Fの処置をしないまま、外側に板鉛を追加したため
DWに変化がないばかりか
慣性モーメントはより大きくなって
ただただ重く弾き難いタッチになってしまっています。
後付けされたこの板鉛は取り外す事にして
さらに元々メーカーが入れた一番外側の大鉛を抜いて
BW基準で鍵盤鉛調整をやり直し
新たに追加する鉛を内側に寄せて
慣性モーメントを小さくする方向での調整を行います。

BWは特別重くはないので
現状維持もしくは近い値とし
Fが大きいのでこれを出来るだけ下げるよう調整するのが良さそうです。

 

smart chart

HSWを全鍵測定。黒が現状です。
メーカーオリジナルのハンマーは
重さのバラツキがかなり大きい事が分かります。

 

 

鍵盤テンプレート
鍵盤の慣性モーメントの算出に必要な
鍵盤テンプレートを作成します。
以前追加された板鉛も記載してあります。

 

オリジナルの平衡等式
オリジナルのサンプルキーでの平衡等式を作成。

BWは標準に近い値で思った程大きくはありません。
Fは非常に大きいです。
FWはシーリング値を超えているものが多く
特に中音と高音で大きいようです。
板鉛が追加されているのでFWはその分余計に大きくなっています。
HSWは低音は小さく、
中音と高音ではピアノのサイズの割には大きめのようです。
SRは標準少し高めといったところです。

C4(40key)を3要素関連表でみると
HSW指標10で、SRが6の場合
FWシーリング値マイナス3gとするには
BWは48gになるとあります。
しかし実際のBWは38gですので
鍵盤の鉛量を増やしてBW38gを実現している事になります。

作業の方向性としては
BWは現状維持に近い値とする。
HSWは低音は大きくする方向で揃え
中音と高音は下げる方向で揃える事となります。
SRは既にパンチングの半カットを行っているが
6以上あるのでヒールへのスペーサー挿入で
もう一段階下げる、
最終的にFWはシーリング値を超えないよう調整。
Fは出来る限り軽減。
といった感じを想定します。

 

平衡等式を利用してシミュレーション
C4(40Key)で平衡等式を利用してシミュレーションしてみます。

 

数値は左から
DW , UW , BW , F , KR , WW , WBW , HSW , SR , FWシーリング値 , HSW指標 , AR となります。

HSWの指標を一段階下げBWを3g小さくします。
ヒールへのスペーサー挿入によりSRを0.4下げてBWをさらに4g小さくします。
(因に前回こちらで伺った際に、出先でパンチンングの半カットを行っていますので
SRは実際にはこの時点でオリジナルより2段階下がる事になります)
最後に下がりすぎたBWを鍵盤鉛調整により戻し
FWはシーリング値マイナス0.7gとなりそうです。
結果としてBWはオリジナルより若干増えますが
FWがシーリング値以下となり
Fを下げることで、今より弾きやすくなると思います。
この時点で C4(40Key)はDW57g , UW23gとなっており
伝統的な鍵盤鉛調整の考え方に固執していると
なんだちっとも軽くないじゃないかと思われるかもしれませんが
この時点ではまだDW , UWは気にする必要はありません。
現段階ではBW , FW , HSW , SRに注意しながら試行していけば問題ありません。
最終的にこのC4(40Key)がどういう値になったかは
次回の「作業編」で後述します。

 

FW比較計算表
FW比較計算表と慣性モーメント(鍵盤)計算表での試行。

一番外側の後付けされた板鉛を取外し
メーカーがDW基準で入れた外側の大鉛も抜いて
内側に鉛を追加することで目標FWを達成する
効率的作業を選択します。

 

BWと慣性モーメント値の比較
最終的にBWはオリジナルの38gから40gとなり5パーセント大きくなりました。
その分慣性モーメントは、アクション全体で15.7パーセント小さくなっています。
あとはFの処置を徹底的に行えばDWは小さく、UWは大きくなり
軽快で指に吸い付くようなタッチを得られるようになる筈です。

 

作業編に続きます。

タッチウエイトマネジメント(Nakamura Touchweight Management)
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