グランフィールの取付け(ヤマハUX10Bl)

Granfeel
ヤマハのアップライトピアノ、UX10Blに
「グランフィール」を取付け。

 

小学生のお嬢さんも徐々にピアノが上達してきて
アップライトアクションの性能では
上手く連打やトリルが弾けなくなってきたようで
グランフィールを取付ける事に。

以前よりは世に知られるようになったグランフィールですが
まだご存知ない方の為におさらいを。
「グランフィール」はお手持ちのアップライトピアノで
グランドピアノ同等の連打、トリルの性能を実現し
響きまでグランドピアノに近づく技術です。
細かい事を言うともっと色々あるのですが
ざっくり言えばそんな感じ。
既にアップライトピアノをお使いであれば
グランドピアノに買い換える事なく
アップライトピアノの性能を格段に向上させる事が可能です。

 

グランフィールを取付ける為にアクションをお預かりしてきましたが
若干の問題が...

 

ダンパーストップレール
このUX10Bl、ダンパーストップレールが
次高音の途中(ダンパーの切れ目)までしかありません。
一般的なアップライトピアノの場合は
最低音から最高音までをカバーするような
長いダンパーストップレールが取り付いています。
(要するに両端のブラケット間で取り付いています)
昨今はコストダウンのためかダンパーストップレールが
途中までしか伸びていないピアノも珍しくないですが
この時代(製番4581XXX)のヤマハでも
こういう事があるようで、注意が必要です。

 

グランフィールパーツの一部は
このダンパーストップレールを利用して取付けますので
高音部分まで伸びていないと上手くありません。

 

ダンパーストップレール2
もっともこのピアノの場合は心配ありません。
ヤマハから標準長のダンパーストップレールを取り寄せ。
上(猫側)が一般的な長さのダンパーストップレール。
下がこのピアノに元々付いていた短いダンパーストップレール。
高音ブラケットには、ストップレールをとめる為の穴こそあいていますが
ネジが切ってないので、M5でタップを切り
無事、最高音までカバーするストップレールが取付け出来ました。

 

グランフィールの取付けを希望される方の中で
最近ご要望の多いオプション作業が
「バックストップ方式」を「グランド仕様」にするというもの。

アップライトのバックチェック
上の写真で緑色のクロスが付いた部品が
一般的なアップライトピアノのバックチェック。
ハンマーアッセンブリーのキャッチャーという
スキンの貼ってある部品を
この緑色の部分でキャッチする訳です。
(弦を叩いたあと戻ってきたハンマーアッセンブリーを緑色の部分で受け止める)

 

グランド仕様のバックチェック
グランドピアノ仕様のバックチェックに交換していきます。
グランドピアノでは緑色のクロスではなく
上のようにバックチェックはスキンとなっています。

 

アップライトのバックチェック
そしてこちらはアップライトのキャッチャー。
この鹿革の貼られた部分を、先ほどの緑色のバックチェックが受け止めるのが
一般的なアップライトのバックストップ。

 

それを

 

キャッチャーへのスカッチ入れ
鹿革を剥がし、ベルトサンダーでキャッチャーを
GPハンマーテールのアールに成形し
横溝(スカッチ)を入れます。
グランドピアノのバックチェックが咥えるのは
スカッチの入ったハンマーテール部分です。
アップライトでは、キャッチャーがGPハンマーテールに相当しますので
このようにキャッチャーをGPハンマーテールと同じ様に加工し
バックチェックもグランド仕様に交換する事で
グランドピアノと同じバックストップ方式を実現します。
実際の効果ですが、アップライトのもっさりしたタッチ感が減り
スッキリしたタッチ感を得られます。

 

その他、ダンパーレバーとスプリングの接点での雑音対策や
下針を入れてハンマーファイリング、
金属パーツの磨き直しや各部潤滑、清掃をしています。
もちろんハンマーバット加工も行っています。
(グランドピアノのタッチを実現するのにとても重要な加工です)

 

アクションを納品して、調整を済ませたら
見た目はアップライトなのに
タッチと響きはグランドピアノという
グランフィールピアノの完成です。

 

お客様に試弾して頂いたり、音を聴いてもらい
響きとタッチがグランドピアノになっている事を
確認してもらって作業完了です。
とても満足頂けたようでした。
「低音セクションの響きが良くなった」と仰ってて
確か以前もそんな感想を、
別のピアノにグランフィールを取付けた時にももらったような。
これはグランフィールのパーツの働きにより
(ショット&ドロップスプリングといいます)
普通のアップライトピアノでは出す事の出来ない高次倍音が
豊富に出るようになった事によるもので
グランドピアノの音を聴いたときに
アップライトピアノにはない華やかさを感じる理由の一つはここにあります。

 

アップライトピアノの性能に限界を感じてきた方々、
グランフィールの取付けを検討してみては如何でしょうか。

 

「グランフィール」については
以下のページに詳細を掲載しております↓
http://www.piano-tokyo.jp/granfeel.html

 

 

渡辺ピアノ調律事務所
〒154-0016 東京都世田谷区弦巻1-20-14
E-mail  info@piano-tokyo.jp
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weblog  https://www.piano-tokyo.jp/blog/

消音ユニットの取外し(ザウター114)

sauter 114 premiere
SAUTER(ザウター) UP114 Premiere の調律と消音ユニットの取外し。

暖かい木の音色と欧州ピアノならではの「鳴り」が魅力のザウターピアノですが
このザウターは腰の抜けたような響きとタッチでイマイチな状態です。

 

コルグ消音ユニット(ハイブリッドピアノ)
変なタッチと響きの原因は、後付けで取付けてある消音ユニット。
このメーカーの消音バー(ストッパー)は
ポン付けした場合、まず直線性は確保出来ません。
多くが低音と高音の消音バーは手前側に寄ってしまうので
やむを得ず低音と高音のレットオフを
異常に広くとって対処してるのをよく見かけます。
このユニットで消音バーの直線を確保するためには
ブラケットを削る等の加工が必要になりますが
ほとんどの場合、必要な加工をせずに
そのまま取付けてしまっているケースが多いです。
このザウターも同様な後付けがされていて
中音のレットオフは概ね8mmから10mm前後、
高音・低音セクションのレットオフは12mmほどと
ピアノの一般的なレットオフ寸法とは
大きくかけ離れてしまっていました。

 

このピアノは前オーナーから
現在のオーナーのもとに来たのですが
今のオーナーさんには消音ユニットは必要ないのに
消音ユニットが付いた状態で納入され
そのまま弾いていたとの事。
まったく消音ユニットは使わないそうなので
今回取り外し、調整を元に戻す事に。

 

取り外した消音ユニット
消音ユニットを取外しました。
取付けにはそこそこの時間が掛かりますが
取り外すのはあっという間です。
アコースティックピアノにはまったく必要の無い部品達が取り外され
ピアノ内はスッキリし、調整作業も効率良く出来るようになり
音とタッチは本来の性能を取り戻します。

 

ダンパーストップレール
消音ユニットは、ただ取り外せばOKという訳ではありません。
ユニットを取付ける時に、外した部品達があります。
「ダンパーストップレール」という長い棒状の部品と
それをアクションに取付けるネジ類達。
今回のお客様の場合は、ストップレールアッセンブリーを
全て保管していてくれましたので
アクションは元の状態に戻せます。

私がこれまで消音ユニットを付けた全てのピアノは
外した「ダンパーストップレール」をお客様にお渡しするか
失くしてしまいそうなお客様の場合には
底板の影響の無さそうなところに
取り外したストップレールを忍ばせてありますので
いつでも元のアコースティックピアノに戻せます。

消音ユニットを取付ける方(もしくはショップ)によっては
ダンパーストップレールを処分してしまうケースが少なくないようですが
ストップレールとネジ類は必ずお客様に渡して頂きたいものです。

 

ザウターピアノ
アクションを元の状態に戻し整調作業を。
鍵盤周りの調整からはじめてアクション側もじっくりと。
問題の広過ぎるレットオフを
高音2mm、中音2.5mm、低音3mmに。

無事にザウターらしく繊細な音から
迫力のフォルテまで出せるようになりました。
お客様の懸念事項だった鍵盤の戻りの悪さも
ご確認頂き問題なしとのことで作業完了。

アクションに一部修理が必要なところが見つかり
この部分は後日アクションをお預かりして修理する事になりそうです。

切りのいいところまでやって6時間ほどの作業でした。
今回手を入れられなかったところは
また次回以降の定期調律で調整していきます。
ピアノは定期的なメンテナンスを継続する事で状態を維持出来ます。

 

渡辺ピアノ調律事務所
〒154-0016 東京都世田谷区弦巻1-20-14
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グランフィールの取付け(ペトロフ P 131)

PETROF P 131
ペトロフ P 131グランフィールを取付け。

高さ120cmクラスのペトロフはわりと見かけますが
このピアノは130cmクラスの「ハイエスト・シリーズ」で
コンサート用アップライトに位置づけられるモデルです。
国産小型グランドに負けない音色を奏でます。

鍵盤の弾き心地もグランドピアノのような
奥行きの長いピアノを弾いているような感覚を得られます。
その理由は...

鍵盤鉛
バランスピンの前後に鍵盤鉛を配置することで
慣性モーメントを大きくし
奥行きの長い大きなピアノを弾いているようなタッチにしてあります。
BWは42g程度で、このクラスのピアノでは普通の値ですが
数値以上にどっしりとした弾き心地となっています。

レペティションスプリング
アクションはペトロフレンナーではなくフルレンナーです。
レペティションスプリングやドロップスプリングを取付け
ハンマーバット加工等を行い
グランフィールピアノとなるよう仕上げます。

納品調整後、お客様に感想をお伺いしたところ
「低音の響きが良くなった」とのこと。
ドロップスプリングが搭載されたことで
高次倍音が豊富に出るようになりましたので
華のある音の響きになっています。

グランフィールを取付ける前は
グランドのような弾き応えのある鍵盤だけど
何かが足りない印象のタッチでしたが
レペティションスプリングが取り付いたことで
上手く不足分が補え、反応の良い鍵盤となり
非常にコントロールしやすいタッチのピアノに生まれ変わりました。

 

「グランフィール」については
以下のページに詳細を掲載しております↓
http://www.piano-tokyo.jp/granfeel.html

 

 

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