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ピアノの調律を安定させる為に ~湿度管理~

グランドピアノと湿度計
ピアノを末永く快適にお使い頂く為に、また調律を安定させる為には、
ピアノのあるお部屋の湿度(しつど)を一定に保つことが必須です。

  • まずはお部屋に湿度計を置きましょう
  • 梅雨時から夏が終わるまでは除湿機で適湿に保つ
  • 秋冬は気化式の加湿器で適湿に保つ

一般的な国産メーカーのピアノは1年を通じ、相対湿度を50%程度に保ってあげると、音律やタッチが安定し、ピアノ本体の寿命も延びます。
※欧州メーカーのピアノは、湿度40パーセント台を推奨しているものもありますので、いつも来ている調律師さんに確認してください。

湿度の管理には、目安とする手助けになる湿度計が必須アイテムです。
余程ジメジメしていたり、カラッカラに乾燥している日は誰でも肌感覚でも分かるでしょう。
ですが湿度55パーセントと湿度60パーセントの違いを肌感覚で当てられる人はまず居ないと思います。
そこで便利なのが湿度計です。

わりとありがちなのは「24時間エアコンを使用しているから大丈夫、除湿出来てるわよ」というケース。
エアコンだけでは湿度が下がらない場合が
エアコンを運転しているということそのものに安心している場合で、実際に湿度計でチェックしていない方も多いです。
いざ正確な湿度計を設置してお部屋の湿度をチェックしてみると、さっぱり除湿出来ていなかったという事は割に多いものです。

また、夏場の除湿はしていても冬場の加湿をしていない場合も同様で、冬期に湿度計を設置し値をチェックしてみると、お部屋は過乾燥状態であったという場合も少なからずあります。
体感で湿度をチェックするのは難しいので、やはりある程度正確な湿度計が必要です。

EMPEX SUPER EX 湿度計

安価で比較的正確ということでの市販品ですと、例えば、SUPER EX SENSOR を搭載した、エンペックスの「スーパー EX 湿度計」をご用意ください。
国産ピアノなら室温が20度くらいの季節であれば湿度計の値が50パーセント近辺を指すように、お部屋の湿度をコントロールするように心がけてみてください。

ここで気をつけなければならないのは相対湿度だということです。
室温28度の時、湿度は42パーセント付近を指し室温15度の時、湿度は55パーセント付近を指すでしょうがこれでOKです。

室温28度の時に湿度が40パーセント前後になっているからと言って加湿器による加湿により50パーセントにするとそれは湿り過ぎです。
室温15度の時に湿度が60パーセント前後になっているからと言って除湿してしまうと乾き過ぎとなってしまいます。

あくまでも基準は室温20度の時に湿度50パーセントです。
(欧州製ピアノの場合、室温が20度の時でも湿度40パーセント台とする場合があります)

多くの市販の湿度計は、精度に疑問を感じるものが多いです。(5%~15%近くも誤差のあるものがあったりして使い物にならない事も)
スーパー EX は、誤差 ±2パーセントと比較的安定しているようです。
安価に購入できる市販品としては、まずまずの精度で湿度計の入門機としてオススメです。

amazonや楽天で購入可能です。
「湿度計 スーパーEX」や「エンペックス スーパーEX」等で探すとたくさん出てきます。
※スーパーEXセンサーが搭載されていれば、機種はどれでも構いません。
お好みのデザインの物をお求めください。

スーパー EX以外にはTFA Dostmannもオススメです。
より正確に計測したい場合は、testo(テストー)の温湿度計をお試しください。

また、湿度計は年月の経過とともに、精度が劣化することが避けられません。
そのため、3年程度に一度、校正に出すか、新しいものに買い替える事で、より正確な測定が可能になります。

一般的に、梅雨時~夏が終わるまでは、除湿が必要となりますので、エアコンの24時間運転と除湿器(コンプレッサー式)の24時間運転を併用して、適湿に調節してください。
(高すぎる湿度を50%まで下げる努力をする)
※梅雨時など、エアコンのドライのみですと50%まで下がらないケースも多いです。

ピアノ防湿器ダンプチェイサー

お部屋が広すぎる等の理由で部屋ごとの除湿が難しい場合は「ダンプチェイサー」等の防湿器をピアノ本体に取付けてしまうのも一つの方法です。
個人的にはダンプチェイサー単体に頼るよりも、三菱電機の除湿機でお部屋全体を除湿する方法がオススメです。

三菱電気除湿機180

除湿機のオススメは三菱電機のMJ-P180VXです。
この2台は任意で湿度設定が出来る機能が付いています。
この機能を利用して「湿度50パーセント」とあらかじめ設定してしまえば、お部屋は概ね湿度50パーセントに維持されるので手間要らずで非常に楽です。
小さな部屋の場合はMJ-M100VXでも十分除湿出来ます。
但しこの2機種には湿度設定機能がありません。「強・弱」のボタンを選んで除湿する格好になります。
三菱電機の除湿機はシーズン毎に微妙に型番が変更されますが、基本的にモノはほぼ同じです。

コロナ除湿機180

逆にあまりオススメではない除湿機はコロナの除湿機。
除湿能力はさほど問題ないのですが、定期的にガラガラと結構な音が発生し、ピアノを演奏する部屋で使用するには少々難有りです。
三菱の除湿機と比べるとコロナの除湿機は低価格ということもあってか使っている方も多いのですが、除湿機が発する騒音が気になる方は三菱の除湿機を検討なさると良いでしょう。

冬は連日、湿度30%~40%前後となってしまう事も多く、放っておくとピアノはカラカラに乾き、調子を崩しがちです。(ピッチの低下、ロストモーション、各フレンジスクリューの緩み、膠(にかわ)切れ etc...)

加湿器
概ね11月中旬から3月中旬までは、加湿が必要になります。
気化式もしくはハイブリッド式の加湿器をご使用ください。
加湿器はパナソニックのFEシリーズがオススメです。
ドイツの加湿器 Venta も良さそうに思えますが、パナソニックの方が加湿器としての能力は高いです。
スチーム式の加湿器はは結露の原因となり、ピアノがダメになるので絶対に使用しないでください。
※冬季、例外的に室温が低くしかし湿度が高いようなお宅の場合、デシカント式の除湿器、もしくはハイブリッド式の除湿器をご使用になると、室温が低くても、しっかり除湿出来ます。

春と秋の晴れている日は、窓を開けて換気してあげるのも良いでしょう。
但し、春や秋でも日によっては、極端に湿度の高い日や過乾燥ぎみの日はありますので、常に湿度計の値を気にかけてください。
逆に梅雨時~夏場や冬場でも日によっては、快適な湿度の日もあります。
そんな日は窓を開けての換気も平気です。
基本的には梅雨~夏と冬季の換気は、朝夕短めに行うくらいにしておくのが望ましいです。
雨の日は、年間通じて窓を開け放つのは控えましょう。
※加湿器、除湿器、エアコンに搭載されている湿度計は割とアバウトな事が多いので、お部屋に設置した正確な湿度計の値を優先してください。

駒と響板
湿度を一定(50%程度)に保つ目的は大きく2つ。

  • 響板(きょうばん)や駒の膨張・収縮を抑え、音律(ピッチ)を安定させるため。
  • ピアノを痛めない(長持ちさせる)ため

湿度をコントロールしていない環境下に置かれているピアノは短命に終わってしまいます。
精度の良い湿度計、エアコン、除湿器、加湿器は、ピアノを保守管理して行く上で必需品ですので足りない物は揃えると良いでしょう。

ピアノはまるで生き物。
故に呼吸しています。
定期的な調律を欠かさない事はもちろんですが、常に気をかけて湿度管理をし、可愛がってあげると答えてくれます。
※一般家庭はコンサートホールやレコーディングスタジオではないので、可能な範囲(在宅時)でピアノを気にかけてあげるだけでOKです。
それだけでもずいぶん調子が良くなりますよ。

次に湿度の変化が、具体的にどのように調律に影響するのかを見ていきましょう。
ピアノ調律後のピッチ変動と湿度の関係

関連リンク : ダンプチェイサー

The author is Masami Watanabe

ピアノや調律に関するご質問は、
お気軽に渡辺宛 info@piano-tokyo.jp までお問い合せください。

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