カワイGX-2のタッチウエイトマネジメント

カワイGX-2
カワイのグランドピアノGX-2のタッチウエイトマネジメントを行いました。

カワイのピアノを使っている方に多い
「音色は気に入ってるんだけど、なにしろ鍵盤が重くて...」
というものです。

 

このピアノを弾くのは高校生で
タッチウエイトの不満と要望は

・短い曲なら何とか弾ききる事が出来るが、長い曲になると途中で手が疲れてしまう
・今より少し軽くして欲しい
・スタインウェイや軽かった時代のヤマハほどは軽くしたくない

といった内容です。

 

話しを伺うと、このグランドピアノの前に使っていたのもカワイのアップライトで
カワイの重たいタッチには慣れているものの
それにしても新調したグランドは鍵盤が少し重いので
もう少しだけ楽に弾けるように軽くなると良いとの事。

依頼者の希望するタッチウエイトが割と明確なので
作業する側としても青写真が描きやすく助かります。

 

そして昨日、仕上ったアクションを納品し調整を済ませました。
お客様からは
「タッチ、とても良い、弾きやすい」との感想を頂戴しました。
弾き手の思い描く理想のタッチウエイトに調整されると
何時間でもピアノを弾いていられるようになります。

 

ピアノは納品されてまもないGX-2で
整調は概ね問題ないものの
中音下あたりのダンパー掛かりが遅く
ダンパーが上がりきっていないのと
総上げもバラツキがあったので、修正しました。

少し弾かせて頂いた感じで
すぐに「重い!」と感じるくらいにタッチの重いピアノです。
アクションをお預かりして重さの原因を分析し調整します。

 

オリジナルの平衡等式
サンプルキーでのオリジナルの平衡等式。

BWは49g前後と重め。

HSWは低音は指標9.5前後で思ったほど重くないですが
次高音から最高音は指標10から11と重め。

平衡等式から得られるSRは6.3から5.9。
2g治具で低音が6.5と高め、中音と高音は6.0。

Fは鍵盤によって若干高め。

FWは予想に反し小さめのキーが多いです。

6mm治具によるARは5.7。

 

今回は今より少し軽く作業ですので
HSWを一定量下げて
SRは一段階だけ低くして
BW基準の鍵盤鉛調整をすれば
顧客の希望するタッチになりそうです。
目標とするBWは43gにして
慣性モーメントも少し小さくすることで
長時間弾いても疲れないタッチを目指します。

 

オリジナルのHSW
オリジナルのHSWスマートチャート。

低音は指標9から10、中音割振り付近で指標11のものがあり
次高音から最高音も指標10から12と重めでした。

全域を指標9.5くらいまで下げて
BWと慣性モーメントを小さくする方向で調整します。

 

鍵盤テンプレート
慣性モーメントも変更したいので
鍵盤テンプレートを作成。

 

 

FWと慣性モーメント
オリジナルのFWが小さかったので
慣性モーメントを操作しない作業ならば
Dの「別の効率的作業」で、外側の鉛を僅かに削れば
それで目標FWとなりますが
慣性モーメントも小さくしたいので
Cの「効率的作業」、外側の鍵盤鉛は抜いて
内側に移動する作業を選択します。

今回はC0Gも意識して鍵盤が効率的な運動をするよう調整します。
このキーではC0Gが0.430となっています。

 

オリジナルと作業後の比較
BWが9パーセント小さくなり
慣性モーメントは5.8パーセント小さくなる
という結果が得られました。

 

 

HSW調整後
調整後のHSW。

指標9.5くらいで綺麗に揃いました。(赤丸)
音色のバラツキも解消されそうです。

 

カワイのウイペン、スティック修理
弾いた感じ妙に重く弾きにくいのと
Fが大きめの鍵盤がある事から大体想像はつきますが
カワイのプラスチックアクションがスティックを起こしていました。
今年は特に8月が長雨でしたので
カワイ使用者からのスティック修理依頼が急増中...

新品ですが、少しでも湿度が高いと
カワイのアクションはスティックを起こすので注意が必要です。

お客様はエアコンこそ24時間運転しているものの
湿度計で確認している訳ではなかった為
実際に湿度が下がっているかは確認しておらず
「多分乾いてるんでしょう?」という程度の運用でした。
実際の湿度をチェックしてみると室温26度で湿度60パーセントでした。
この室温だともう少し湿度が低いほうがいいですね。
木製アクションのピアノならば
この程度の湿気であれば普通に動いてしまうところ
カワイのアクションだとスティックしてしまうようです。

ダイキンのエアコンをご使用で
このエアコンならば本来はもっと除湿能力が高い筈ですが
購入から5年は経過していて
その間、クリーニングを行っていないとの事で
除湿性能がかなり落ちているものと思われます。
3年から5年に一度、
メーカーに「分解洗浄」を依頼すると
驚く程エアコンの性能が復活しますので
ピアノの定期調律と同様、エアコンの「分解洗浄」も定期的に行う事をオススメします。
そのうえで湿度計で湿度をチェックして
任意の湿度まで下げられない場合は
関東地方であればコンプレッサー式の除湿器を
エアコンと併用して頂ければ、適湿まで下げられるでしょう。

ウイペンフレンジのスティックが特にひどく
10g超えでトルクゲージを振り切ってしまうフレンジが多数。
サポートフレンジも同様で、ジャックは6gから8gとやはり高め。
シャンクフレンジは2gから3gと問題なく
これはシャンクだけは木製だからで
雨が多く、湿度の高い日本では
プラスチックアクションは少々扱いにくいです。
カワイの場合はシャンクだけ確認して動いていても
下部のウイペンアッセンブリーは総プラスチックなので
こちらがスティックしている場合があるので要注意です。

全てのフレンジのトルクをチェックし
適正トルクに修正しておきました。

 

キャプスタン
キャプスタンの状態ですが
右がカワイのオリジナル状態、
左が研磨後です。

納品したての新品でも
傷がありデコボコしていましたので
1500番から2000番のペーパーを掛けてから
バフ掛けし鏡面仕上げにしました。

ドロップスクリューも似たような状態でしたので
こちらも磨き直しています。

 

 

鍵盤の鉛抜き
BWを小さくして慣性モーメントも小さくする作業なので
事前に手前側(外側)の 鉛を抜いてしまいます。

カワイGX-2のオリジナルの鉛の配置は
かなり外側に寄せて入れていました。
DW基準で入れているからでしょうが
これでは慣性モーメントが大きくなってしまいます。

鉛のかしめは甘く、簡単に抜き出す事が出来ました。

 

BW基準の鍵盤鉛調整
BW基準の鍵盤鉛調整で
新たに鉛を入れる位置を決めます。
今回は少し重めとしますのでBWは43gとし
事前のシミュレーションで得られた
慣性モーメントを小さく出来、
且つ目標とするC0Gを満たす位置になるよう
鉛の位置を決めていきます。

 

鍵盤の鉛入れ
新たな鍵盤鉛は内側に寄せて入れました。
音域により、元の鉛よりサイズを小さく出来たり
鍵盤によっては新たな鉛を必要としないキーもあります。
タッチウエイトマネジメントでは
鉛の位置を内側に移動出来たり
鉛のサイズを小さく出来たり、鉛の数を減らせたり出来ますので
タッチウエイト変更の自由度が高く
またその組み合わせも多様です。

 

  • 鍵盤が重いので軽くしたい
  • 鍵盤が軽過ぎるので重くしたい

等の
タッチウエイトの調整、承ります。

まずはメールでお問い合わせくださいませ。

 

タッチウエイトマネジメント(Nakamura Touchweight Management)

 

渡辺ピアノ調律事務所
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