カワイCA-40Mのタッチウエイトマネジメント

カワイ CA-40M

カワイ CA-40Mをお使いのお客様から
タッチが重い(鍵盤が重い)ので軽くして欲しいとの依頼があり
アクションをお預かりしてタッチウエイトマネジメント作業を行いました。

 

先日無事アクションを納品してお客様に試弾して頂いたところ
「全然違う!別のピアノみたい!」と、とても喜んで頂けました。
このピアノの場合、BW38gで
FWシーリング値マイナス3gを達成出来ましたので
とても弾きやすいピアノに仕上りました。

 

最初にEメールで問い合わせを頂いて
「いつも来ている調律師さんにタッチが重いので軽くしてくださいとお願いしたら
何やら5時間くらい作業をしてくれたので、作業後期待して弾いてみたところ
まったく軽くなってなかったんです...」
との事でした。

お伺いして、まずは弾かせてもらったところ確かにタッチは重いです。
アクションを観察してみると、「あがき」が8.5mmになっていて
その状態では「働き」が出なくなるので
打弦距離が44mmにしてありました。
あがきを少なくすることで鍵盤のストロークを短くして
軽く感じるようにしたのでしょうか?
真意は分かりませんが各整調寸度が基準寸法から大きく外れてしまうと
もはやピアノのタッチでは無くなってしまいますし
なにより実際に弾いてみて軽くなっていないので
小手先のギミックでは対処出来ないという事になります。
顧客が求めているのは物理的なタッチウエイトの軽減なのです。

 

アクションをお預かりして
「中村式タッチウエイトマネジメント」を利用して
標準的なタッチのピアノになるよう調整していきます。

 

オリジナルの鍵盤鉛
オリジナルの鍵盤鉛の配置です。
上からC1、C2、C#2、C4、C#4、C6です。
鍵盤鉛は外寄せで入っていて
低音と中音は鍵盤鉛が多い印象を受けます。
FWはシーリング値を超えているのではと予想されます。

 

オリジナルの平衡等式
オリジナル状態の各部をデータ採集し平衡等式を作成します。

BWは37gから43.5gです。
数値としては平均40g程度で
BWは実際に弾いた感じよりは思ったほど重くありません。

Fは11gから15gでこちらも予想よりは大きくありませんでした。

FWは全鍵でシーリング値を超えています。

HSWは指標8から指標10で中音と高音が重め。

SRは6.0から6.5でやや高めです。

三要素関連票を確認してみると
鍵盤鉛を多く入れることでBWを下げていることが確認出来ます。

BWが40g前後なのに実際に弾いた感じは
それよりもずっと重く感じるという事は
「静的重さ」だけではタッチウエイトは調整しきれない事を意味しています。
もちろん「静的重さ」を標準値に寄せることは大切なのですが
同時に「慣性モーメント」を下げることが必要になります。
加えてSR、ギアレシオの変更やFをきちんと管理出来れば
弾きやすいタッチのピアノに仕上げる事が可能です。

 

以前遠方の方から
「鍵盤が重いので「タッチレール」を取付けてもらいました。
以前よりは少し楽に弾けるようになったのですが
やはりまだ重く感じるのですが...」
と相談のメールを頂きました。

タッチレールはBWだけを下げるタッチ補助ツールです。
伝統的に行われている鍵盤鉛調整もタッチレールと同じですが
これまではBWを調整すればタッチの調整は完成という
作業が行われる事が多かったですし
今日でもそのように調整する技術者が大半といった状況です。

ところがタッチレールや伝統的な鍵盤鉛調整で
BWを下げても実際に弾いてみると
あるピアノではそこそこ軽く感じるように仕上ったけど
別のピアノではBWは任意の重さに設定出来たのに
弾いてみると思ったほど軽くならなかったという矛盾が起きるケースもあります。
これらはタッチが「静的重さ」だけではなく
「動的重さ」を含め調整しなければならないという
分かりやすい例と言えるのではないでしょうか。

 

kawai_ca40m_03
オリジナル状態のHSWスマートチャートを作成。

今回もカワイ特有の傾向で、低音は指標7から指標8で軽め、
中音と高音は指標9から指標11と重めになっていました。
指標9に寄せていくと全体がなめらかに揃いそうです。

 

平衡等式を利用した事前シミュレーション
C1(4key)の平衡等式を利用しての事前シミュレーションです。

事前に作成したHSWスマートチャートから
低音のHSWは増量の方向で調整していく事になるので
HSWは11.7gから0.1g増えて11.8gに変更、
ほぼ変わらずでBWは43.5gのまま。

バランスパンチングクロスの半カットで
SRを一段階下げてBWは38.5gに下がります。

さらにもう一段階SRを下げるために
ヒールクロスにシムを挿入して
BWは33.5gまで下がります。

最後に鍵盤鉛調整を行い
BWは38gになり、FWはシーリング値マイナス3.5gを達成出来ましたので
弾きやすいタッチのピアノに出来そうです。

 

鍵盤テンプレート
平衡等式と連動して慣性モーメントを調整するために
鍵盤テンプレートを作成します。

 

 

 

kawai_ca40m_16
低音の鍵盤は鍵盤鉛が入り過ぎていて
効率的作業を選択するにしても鉛が多くなりすぎてしまうので
「別の効率的作業」で外側の鍵盤鉛を削る作業を選択する事にします。
中音と高音は外側の鉛を抜いてからの「効率的作業」にします。

 

慣性モーメント値
最終的にBWが13%減、アクション全体の慣性モーメントが5.1パーセント減になりました。

 

HSW調整後
赤がHSW調整後、黒が調整前。
HSWを指標9に寄せながら隣の鍵盤と繋がるように調整しました。
HSWを揃えることでタッチが揃い、音色のバラツキが無くなります。

 

ウイペンの調整
ウイペンはフレンジのトルクが10gオーバーと
スティックぎみでしたので(フレンジはプラ製)
88ヶ所のスティック修理をしつつ
ヒールにシムを挿入していきます。
ヒールクロスの汚れをクリーニングしてからPTFEパウダーを塗布します。
サポートレバー上下の黒鉛が塗布された部分をなめして
ツルツルに仕上げておきました。

 

バランスキーピン磨き
かなり錆びて汚れたバランスキーピンを磨いていきます。
写真右半分が磨かれた状態、左半分が磨く前の状態です。
フロントキーピンも同様に磨きます。
バランスピンを磨き、鍵盤のバランスホールをベンジンで清掃したら
キツすぎて動きの悪かった鍵盤は
クリーニングだけでスムーズに動くようになりました。
清掃前にいきなりバランスホールを広げてしまうと
ホールを無駄に広げてしまう事になりかねませんので
まずは清掃してみると、それだけで済んでしまうケースが少なくないです。
前後キーブッシングクロスには黒鉛が塗られていたので
こちらも全てベンジンで綺麗に落としました。
黒鉛は時間の経過とともに粘りが出てきて
フリクションを大きくする原因となる場合があります。

 

鍵盤鉛を抜く
鍵盤鉛調整の前に、一番外側に入れられている鍵盤鉛を抜いておきます。
今回は書籍「タッチウエイトマネジメントの方法」で紹介されている
手順と同じBW基準の鍵盤鉛調整を行いました。

 

BW基準の鍵盤鉛調整
この鍵盤では一番外側に入っていた14mmの鉛が
一番奥、支点側に移動しました。
鍵盤鉛の配置が全体に奥側に移ることで
慣性モーメントが小さくなります。

 

アクションを納品し整調
アクションが仕上ったら納品して整調をします。
お預かりした際に事前整調はしてありますが、再度整調を確認していきます。
中音の鍵盤ならしがかなり低くなっていたので修正。
低音と中音のあがきが8.5mmになっていたのを10mmに修正。
ジャックの高さが若干低かったのでサポートから紙一重下に修正し
ジャック前後が奥ぎみになっていたのでローラー板と直線に揃うよう修正。
接近が1.5mmから1mmになっていたので、低音側から3mm、2.5mm、2mmに修正。
全鍵のアフタータッチが揃うよう修正。
レペティションスプリングが強すぎるので修正。

整調を全て基準寸法に戻して
タッチウエイトが標準値になったので
何時間でも弾いていられるピアノに生まれ変わりました。

 

除湿器
アクションを納品した日には
お客様が既にコンプレッサー式の除湿器を用意されていました。
今までは湿度管理することがなかったので
ピアノが湿気を吸い放題でしたが
今後はお部屋の畳数に合った除湿器を稼働して頂けるので
今回調整したアクションも快調な状態を維持出来ると思います。

 

グランドピアノの重たいタッチ、標準的なタッチに調整します。
作業のご依頼、お問い合わせは
Eメール info@piano-tokyo.jp までお気軽にどうぞ。

 

渡辺ピアノ調律事務所
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