カワイKG-3Nのタッチウエイトマネジメント

データ採集
Eメールでタッチウエイトマネジメント作業をご依頼頂きました。
ピアノはカワイのグランドピアノ KG-3Nです。

本日無事に仕上ったアクションを納品しました。
お客様の感想は
「全然違いますね、助かります!」
との事でとても喜んで頂きました。

 

以下作業の詳細です。

 

 

お客様曰く購入店の調律師さんに鍵盤が重いことを訴えたが
「カワイはこういうものです」と言って取り合ってもらえなかったという事です。

実際にお伺いして弾かせてもらうと
確かにタッチはかなり重量級でした。

さっそくアクションをお預かりして
「中村式タッチウエイトマネジメント」で標準的なタッチになるよう調整します。

 

オリジナルHSW
オリジナルのHSWスマートチャート。

低音は指標7.5から指標9の間でばらついていて
中・高音と比べると全体に軽めです。
中音からぐっと重くなり
中音から高音まで指標9から指標10の間でバラツキがあります。
例えば低音と中音の境目はHSWが0.7gも違うので
当然タッチも音色も繋がりません。
全体を見渡して、指標9でなめらかに揃える事にします。

 

2g重りによるSRは
低音6.75、中音6.75、高音6.5 でした。

6mm治具によるARは
低音が6、中音が5.75、高音が5.66 でした。

ハンマーシャンクフレンジとウイペンフレンジはトルクが大きく
重いところで6gから7g程度あります。
K社のプラスチックフレンジはスティック処理が欠かせません。

 

サンプル音の平衡等式
オリジナルのサンプル音のデータを採集し平衡等式を作成します。

BWは50g前後とかなり重め。
FWはシーリング値マイナス3gよりもさらに小さいものや
シーリング値マイナス3g程度のもの、
シーリング値を超えている鍵盤など混在しています。

KRは0.5から0.51。

HSWはスマートチャートを作成した通り
低音が指標7.5から指標9で88鍵全体で見ると軽め
中音と高音が重めで、指標9から指標10。

SRは6.1から6.4で高め。

 

作業の方向性としては
BWが50g前後とかなり重いので
BWは標準的な重さ38gを目標に設定。

FWはシーリング値を超えない範囲とする。

HSWは指標9でなめらかに揃える。

SRが高めなので2段階下げる

実際に弾いている時の重さは
慣性モーメントの影響が大きいので
最後に行う鍵盤鉛調整で鍵盤鉛を内側に移して
鍵盤が動きやすい配置にする。

以上のような見立てになりました。

 

C4の平衡等式
オリジナルのC4(40Key)の平衡等式を使って作業をシミュレーションします。

HSWは指標9で揃えることにしましたが
C4はもともと指標9なのでこのまま変更なしです。

パンチングの半カットでSRを0.4下げると仮定し
HSWが10.5gなのでBWは4g軽くなります。

ヒールへのシムの挿入でSRを0.4下げて
BWがさらに4g軽くなります。

最後にBW基準の鍵盤鉛調整行いBWを38gにすると
FWはシーリング値マイナス1.8gになりました。
なんとか弾けるピアノにはなりそうです。

 

FW比較計算
C4(40Key)の鍵盤鉛の配置をシミュレーションします。
この鍵盤に限って言えば、FWはシーリング値マイナス2.8gで
FWに限って言えばとりわけ悪い数値でもありません。
それでも実際に弾いてみて鍵盤が重く感じるのは
BWが大きすぎる事、レシオが高過ぎること、
慣性モーメントが大きい事などが影響しているからだと思われます。

試行錯誤した後、C行の効率的作業を採用します。
もともと入っている外側の大鉛を抜いて
内側に14mmと10mmの鉛を追加する事で
BW38g、FWシーリング値マイナス、
そして慣性モーメントを小さくする事が出来ます。
軽くしたいだけならばもっと鉛を内側に寄せた配置も可能ですが
それが弾きやすいタッチかというと、そうとは限りません。
そこでCoGの数値も気にしながら配置したところ
最終的にCoGが0.428になる位置に決まりました。

 

BWと慣性モーメント
最終的にBWがオリジナルから19パーセント減、
慣性モーメントは4.8パーセント減という結果になりました。

 

HSW調整後
HSWの調整後。
赤が調整後、黒がオリジナルです。
指標9でなめらかに揃えました。
低音は中音と高音に比べ0.2g軽いので
BW基準の鍵盤鉛調整をする時に
低音を僅かに重めにする事で中・高音とのバランスをとるようにします。

HSWの調整と平行して、スティック処理(センターピン交換、トルク調整)、
ローラーのブラシ掛け(黒鉛を除去)、
そしてテールに溝がまったく入っていなかったのでスカッチを入れました。

ウイペンはプラ製のウイペンフレンジがスティック気味でしたので
センターピン交換をし、同時にシムの挿入を済ませ、
サポートトップがザラザラだったのでなめして
レペティションスプリングの頭が当たる部分も磨き直し、
ヒールクロスの汚れをベンジンで落としテフロンを施工しておきました。

 

高音の鍵盤鉛
オリジナルの次高音の鍵盤鉛です。
支点の前後に鉛を入れてあるので
慣性モーメントが大きくなりタッチが重くなってしまっています。
次高音の数鍵だけ、何故か前後に鉛が入れてありました。
前後とも抜いて、手前だけに入れます。

 

鍵盤鉛抜き治具
某Sさんに見せてもらったものを参考に
鍵盤鉛を抜く際に使う治具を作ってみました。

 

鍵盤鉛を抜く
外側に入っている鉛はタッチを重くするので
事前に全て抜いてしまいます。
今回作った治具が活躍してくれて作業はサクサク進みます。

 

鍵盤鉛の位置決め
一番外側の鉛を抜いた状態で
BW基準の鍵盤鉛調整を行い
新たに鉛を入れる位置を決めていきます。
事前にヒールへのシムの挿入と
パンチングの半カットも済ませてあります。
シミュレーションに沿って入れていきますが
この時気をつけたいのは
隣同士の鍵盤で鉛の配置は同じ傾向で入れるという点です。
同じBW、同じようなFWになるにしても
隣の鍵盤と鉛の配置が極端に違うとタッチが揃わなくなるので
そのあたりも考慮して位置決めをします。

 

鍵盤鉛詰め
一番外側の鉛を抜いて
内側に寄せて鍵盤鉛を入れ直しました。
鍵盤が動きやすくなるので
トリルや連打、速いパッセージなどが
だいぶ弾きやすくなります。

 

グランドピアノの重たいタッチ、標準的なタッチに調整します。
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渡辺ピアノ調律事務所
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