漆喰塗りたて注意 Wet Paint

漆喰の塗り壁

最近割と見かけることが多くなった漆喰の塗り壁。
見た目の風合い、調湿性?など
採用する方の理由は様々でしょう。

家を新築して、壁の仕上がりに
漆喰を採用している方のお宅に
何件か調律に伺っています。

問題が起きる条件は概ね以下です。

  • 漆喰を塗ってから日が浅い。
  • 塗り立ての部屋にピアノを搬入している

この条件を満たすと
もれなくピアノは湿気まみれになり
スティックを起こして
アクションは満足に動作しなくなるようです。

調湿を期待して導入したはずの塗り壁ですが
塗ってから少なくとも
三ヶ月程度は壁が大量の水分を吐き
部屋の湿度が 90パーセント近く
なることが多いようです。
湿度が 90パーセント近くある状態が
連日続いてしまうと
もうピアノはまともに動作しなくなってきます。
塗り立ての部屋に入ると
部屋がじっとりとしていることが
体感出来るほどです。

漆喰によるスティック
漆喰の出す過剰な水分により
上記写真のようにハンマーその他は
スティックを起こし元の位置に戻れなくなってしまいます。

漆喰の部屋の湿度
三ヶ月程経って訪れても写真のように
まだ湿度が70パーセント近くあり
かなり湿気が多い状態が続くようです。
この時は秋の快晴で、外の湿度は40パーセント台ですが
部屋の中はまるで梅雨時のようです。

漆喰を採用した家の湿度の経過を観ていると
大体三ヶ月程で少し乾いてはくるが
まだ完全とは言えず
安全をみるとするなら塗ってから
4ヶ月、5ヶ月、半年程待つ必要がありそうです。
経過は湿度計を観ていれば
手に取るように分かるかと思います。

よって、家の壁に漆喰を塗った場合
塗ってから少なくとも三ヶ月、
場合によっては「半年はピアノを搬入しない」
ようにすれば間違いなさそうです。

尚、完全に乾いてしまえば
漆喰の壁でもこれといった問題は起きません。
塗ってからしばらくの間は
かなりの水分を吐き出すことを念頭におき
導入すればトラブルは回避出来ます。

LORIS というピアノ

LORIS

 

まだまだ出会ってないメーカーがあるもので
このピアノメーカーもお初にお目にかかります。

「LORIS(ローリス」というピアノ。

LORIS LU-2

 

型番は LU-2 。

4_84

 

84年の4月製造と読み解きます。
お客様から聞いた購入時期や所有年数と辻褄が合います。

コルグピアノ消音ユニット

ピアノ本体は30年ほど経過しているですが
コルグの消音ユニット(初期型)が後付けされていて
現役で活躍しております。

消音ユニットが付いている...のは良かったのですが
消音(ヘッドホン使用)時
ペダルを踏んでいないのに
ペダルが効きっぱなしのように
なってしまったとの事。

ペダルセンサー

 

原因は、ペダルのセンサーがずれてしまった為のようです。
正しい位置に修正して、あっけなく元通りに。
このタイプのセンサー、
前後位置や高さが容易に調整出来る反面
稀にずれる事があるようです。
今回はお客様が引越をした後なので
それも関係しているかもしれません。

もう一点、
「1ヶ所、音が出たり出なかったり出にくかったりするんです」
との事。

センターピンのズレ

 

原因はハンマーバットフレンジのセンターピンが
サイドに大きくズレてしまった為
ハンマーがグラグラになっていて
打弦時に毎回好き勝手なところを
叩いてしまう状態だった為です。
センターピンを新しいものに交換し
ブッシングクロスを適正トルクにし
バットプレートスクリューを適正トルクで
且つしっかりと締めて元通りになりました。

前回は1年程前に別の方に調律してもらったそうなのですが
いかにもハンマーへの針入れがされていないような
荒れた音を出していたので
少しハンマーに針入れをして音色を整えたところ
ようやくピアノらしい音になってくれました。
なかなかどうして悪くないです、LORIS 。

ローリスピアノ

鍵盤を軽くして重さのばらつきを修正

ヤマハ C1-SG

 

鍵盤(タッチ)を軽くして欲しい」というご依頼が多いです。

今回のピアノはヤマハの C1-SG 、
いわゆる「小型のグランドピアノにサイレントも付いてますよ!」
でお馴染みのモデルです。
2010年の4月から2012年の8月まで販売されていた
新しいピアノです。

お客様のご要望としては

  • 重たい鍵盤を軽くしてほしい
  • 鍵盤ごとに重さのばらつきを感じるので揃えて欲しい

という内容になります。

サイレントの部材
さっそく作業に入りたいところですが
サイレントの付いたモデルですので
消音のパーツが行く手を阻みます。

消音部材を外す
邪魔な消音のパーツを外し作業にとりかかります。

鍵盤調整1

鍵盤調整2
調律カードの履歴をみると
納品から5回、調律師さんが来ているようですが
これまでこちらに来ていた調律師さんは
調律(チューニング)だけして帰ってしまっていたようで
整調(せいちょう)等されておらず
とくに鍵盤調整は見直しが必要でした。

適正トルクに再調整するだけで
かなり鍵盤はスムーズになると想像します。

鍵盤調整を終えて、必要な箇所の潤滑を見直し
いったんアクションをセットし
ピアノ本体に戻して鍵盤のウェイトを計り直すと
予想通りこれだけでかなり軽くなりました。
作業前のダウンウェイトが 55g から 65g くらい、
作業後は 50g から 55g にまでと 10g 近く軽くなりました。
これなら標準的な重さと言えます。

このところのヤマハのピアノは
全盛期ほど「吊るしの状態でも快調に使える」とは
いかなくなっている印象です。
(以前のヤマハが出荷調整がいらなかった
という事ではありませんが
以前よりもディーラーに調整を
委ねる部分が多いのは間違いなさそうです)
他所のメーカーのピアノのように
出荷後のピアノは一から
調整を全て見直さないと
弾きにくい状態であることが多いように感じます。

今回は重さを軽くすることにくわえ
鍵盤ごとの重さのバラツキを修正しますので
鍵盤の必要な箇所に鉛を追加していき
隣の鍵盤とで重さが揃うように修正していきます。

鍵盤鉛を追加する位置決め

鍵盤鉛を配置
分銅と鍵盤鉛を使って
鉛を追加するのに最適な位置を決めていきます。

鍵盤にマーク
鉛を追加する位置にマーキングしてあります。
チョークなので拭くと簡単に消えます。

鍵盤に穴開け
あらかじめマークした位置に
鉛を追加するために穴開けをします。

鍵盤サイドに穴開けされた

穴開けした鍵盤
鍵盤サイドの穴開け完了。
バリや割れも無く綺麗に開きました。

鉛をセット
開けた穴と同サイズの鉛をセットします。

ポンチ
専用のポンチを当て、思い切って叩くと

鉛追加
鉛は穴の中で膨らみ固定されます。
鉛は柔らかい金属である為にこのようにセットが可能です。

全て鉛を追加
必要な箇所に全て鉛が追加されました。

鍵盤、アクションをピアノに戻して
ウェイトを再計測してみます。
最低音付近で 55g 、
そこから少しずつ重くなって
中音部で50g、
さらに最高音部にかけて
なだらかに軽くなるようにし
最高音部で 48g としました。

リフト値は各音域で
推奨値を下回らないように注意して
鉛を配置してあります。

低音部は若干重たくしてありますが
私の弾いた感じでは、54g か 55g くらいあったほうが
再低音部に関しては自然な弾き心地になるように感じるので
今回はそのようにしました。
この辺りは好みによるところでしょうか。

隣接する鍵盤との重さの差も解消されました。

前述のように
このピアノは納品以来「調律」以外、手が入っておらず
さらに音色に関しては、中音と次高音のつながりが極端なので
次回はこのあたりを自然に音色が変化していくよう
「整音」作業で修正する予定です。

ペダルの雑音の原因は...

u2h_pedal_noise1

消音ピアノユニット絡みの話題が続きます。

U2H (ヤマハ、アップライト)の調律にお伺いした際、
ダンパーペダルから「キュッ」っといった感じの
雑音が出ていました。

通常雑音の発生源として考えられる
ペダル機構そのもの周辺やアクションまでを
チェックしてみましたが
ノイズが出る様子はありません。

雑音の発生源が特定出来ずに
しばらく悩んだ末、原因らしきものが分かりました。

u2h_pedal_noise2
このピアノには10年くらい前に、以前の調律師さんが
テクニクスの消音ピアノユニットを取付けているのですが

 

消音バー(ストッパー)と手元のレバーを繋ぐ
ワイヤーの取り回しが悪く
ペダル突上棒にワイヤーが接触していて
ペダルを踏む度にワイヤーと突上棒が擦れ
雑音を出していました。

 

u2h_pedal_noise3
原因が分かれば後は簡単です。
写真では分かりにくいですが
ワイヤーが突上棒に触らないような
取り回しに修正して一件落着です。

消音ピアノユニットを後付けする場合は
それが雑音の発生源とならないよう
細心の注意をはらって取付けないとなりません。
取り付けの数をこなしている方ならば
概ね回避出来る問題だとは思います。

イヤーパッドの劣化が早いコルグ消音ユニット付属のヘッドホン

コルグのヘッドホン

 

写真をご覧頂いて分かる通り

コルグの消音ピアノユニットに付属する

ヘッドホンは、耳当て部分が

劣化しボロボロになります。

 

ヘッドホン

 

ヘッドホン

ベースはスポンジで

その上を薄いフィルム状のもので

覆っているのですが

それが日焼け後の皮のように

ボロボロと剥けてしまうのです。

 

ヘッドホン

まるで10年使い込んだように見えませんか?

 

ヘッドホン

ところが早い人だと1年も経たないうちに

このようにボロボロになってしまいます。

 

解せないのは

すぐにボロボロになってしまう人もいれば

何年も綺麗な状態のままの方もいるということ。

 

汗や何かに反応してそうなるのかとも考えましたが

どう見ても汗なんかかきそうもない

年配の女性が使っていたものも

わりとすぐに劣化してしまっていたので

何とも言えません。

 

テクニクスのヘッドホン

コルグのピアノ消音ユニットは

旧テクニクス消音ピアノユニットの引き継ぎですので

この付属のヘッドホンは

テクニクス消音ピアノユニット時代のものと

同じもので、ロゴのみ変更されています。

テクニクス時代を含むと

もう10年以上、この劣化するイヤーパッドの

ヘッドホンが販売され続けています...

 

何年か前に、何度かメーカーに

フィードバックしたのですが

中の人曰く

「ヘッドホンなんてのは消耗品で、こんなものですよハッハッハw」

といった具合で取り合って頂けませんでした。

コルグの方、何人かに

同様の話をしても、どなたも似たような対応で

製品に対する誠実さみたいなものは感じられませんでした。

終わっとるわ...

 

ヘッドホン
こちらのお客様は

ボロボロの耳当てが鬱陶しかったのか

キレイに表面のフィルムを全て剥いて

スポンジのみの状態にして使っておられました。

 

どうせボロボロになるんだから

はじめからスポンジのみのほうが潔いように思うなぁ。

 

決して安くは無い金額で取付けた

消音ユニットのヘッドホンが

いくら付属(おまけ)のものとはいえ

こんなになってしまうのは

どうかと思うけどなぁ。

 

事務所のヘッドホン
因にこのヘッドホンは

事務所にあるもので

数千円のさほど高くもない一般的な代物で

恐らく10年前後使っていると思いますが

耳当て部分は何の劣化もありません。

もっとも変な薄いフィルムを採用していないのが

功を奏しているとも言えますが。

素材のチョイスさえ間違わなければ

何の問題もなく長期に使用出来る訳です。

 

そういえば子供の頃(昭和40年代後半から50年代)

使っていたヤマハのエレクトーンに付いてきた

ヘッドホンは、10年以上経っても

まったくイヤーパッドは劣化していなかったっけ。

それから気付いた時には家に鎮座していた

ごっついステレオセットに備え付けてあったヘッドホンも

10年以上、新品のような状態を保っていたっけ。

 

素材を換えれば済む話なんだと思う。

 

It is easy.